サラリーマン金太郎20周年特別企画「男の挑戦」
混迷する日本経済の中でたくましく生きる「金太郎」が帰って来た。

漫画家 本宮ひろ志×歌手・俳優 高橋克典

ーー「サラリーマン金太郎」が20周年を迎えました。その間の思い出話などをお聞きできればと思います。「長かったな」とう印象はありますか?

対談

本宮:

あっという間ですよ。もう漫画を描く気はなかったんですけどね、いろいろ家庭の事情ができて、もう1回金を稼がなきゃいかんと。漫画を描いている大きいところは、自分が楽しいかどうかですから、楽しくなくなると、すぐ辞めちゃうタイプですからね。克典さんはいくつの時、金太郎やったの?

高橋:

35かな? 4か5か。

本宮:

もう15年経ったってこと?50。50代って、すごくいいのよ。

高橋:

いきなり、そっちですか。

本宮:

いやいや、世間でも明確な大人として認めるし、動じないし、自信もあるし、自分は50代って、ものすごく楽しかったね。

高橋:

先生と始めてお会いしたのが先生が50代後半ぐらいですよね。

対談

本宮:

番宣か何かで、教育テレビに一緒に出たじゃない。収録が終わった後、「こんなとこに呼ばないでくれよ」って言ったら、克典さんが、「いや、おっさんの話、面白いから」とか言うわけ。「なんでそんなこと言うの?」って聞くから、「テレビで顔なんか売れたら、おネエちゃんと手をつないで歩けなくなるだろうが」と答えて。そうしたら、そのまま、放送しやがったよね。あれは教育テレビ、立派。

高橋:

確信犯ですからね。(笑)

本宮:

俺、今年で67になって初めてわかったんだけど、中学生みたいな反抗期が出てくるのよ。

高橋:

いわゆる「頑固じじい」の始まり的な?

本宮:

克典さんが65を過ぎたら、俺が言っていることわかるから。例えば、テレビを観てて、お笑いが出てきて、たまに偉そうなコメントか何かすると、「ふざけんな、この野郎」って。ニュースを見ても「ふざけんじゃねえ」とか、世の中に文句ばかり言ってるの。ある日、ふっと気付いたら、「これは、じいさんの反抗期だ」と。世の中のピントは、もうおじいさん、おばあさんには合っていないわけ。たまに手紙が来るのよ。自分は60何歳だけど、毎日1回お風呂に入る以外、極めてつまらない毎日を送っていので自分が楽しめるような漫画を描いてくれと。だから、「60歳以下は読んではいけません」という漫画でも描こうかな、とか。じいさん・ばあさんのアドレナリンを出すというのは、青年に夢を与えるのと同じぐらい重要だと、最近はそういう心境ですから。

高橋:

金太郎も、だんだんそういう境地に行くんですかね?この人は年をとらないですか?

本宮:

いやいや、これ、多分、リアルタイムでいくと、もう、竜太は嫁さんもらっているからね、多分。

高橋:

竜太、25ですからね。あの時は5歳ですから、確か。

本宮:

もし続きを描くんだとしたら、内閣の官房室のサラリーマンにさせたろうかとか、いきなり党の幹事長の顔面、バキーンといっちゃうとかね。

高橋:

大変な。もう、すぐ紛争ですよ。国際紛争。

本宮:

それぐらいのところでもないと、刺激がないかな、みたいな。

高橋:

また、いろんなところを敵に回して、展開することになりそうですけどね。それが面白いわけですから、金太郎も。

本宮:

バカだけど常識人なんですよ。

高橋:

そうですね、人間としてのね。ドラマをやらせていただきましたけど、椎名が会社に来て社長が「なんだ」って言って、社長に楯突くところがあるじゃないですか、1巻か2巻か。「社長というのは、会社の親だろう。社員の親だろう」と。「相手が正面から攻めて来ているのに、終わったあとに子どもをいじめるのか。馬鹿野郎」っていうところで視聴率がぽんと跳ねたんですよ。そういうのみんな、抱えているんですよね。不満みたいな。今って、世の中全体でみんながいい子になっているから、不満って実はもっと膨らんでいる。そんな気がするんですけどね。

ーー「金太郎」の魅力として「親切な部分」という言葉がありましたが、強さとしなやかさといいますか、めんどうにも立ち向かう精神もそのひとつだと思うんですが、最初からそういうキャラクターとして描こうとされていたんですか?

対談

本宮:

いや、基本的に何も考えない。キャラクターを作って、それをどこの舞台にぶち込むか、ということだけなんですよ。あとはもう、自然の成り行きで、明日にならなきゃ明後日が見えるわけないだろうみたいな。それが金太郎の場合は、落ち着いていたのかな。だから変な話ね、ファーストシーンで舟の上に乗っかって、「行ってくらぁ」って鉢巻きして、赤ん坊を背中に背負っている。その絵を描いた時、「あ、勝った」って、感じるわけですよ。意識的に「ここ狙いでこう」というので成功するのは、1本あるか2本あるか。あとはみんな、成り行きですよね。

ーー高橋さん、演じる側で、最初に金太郎と対面した時と言いますか、どんな印象でしたか?

対談

高橋:

やる前は僕だと「許容量不足」を感じました。僕も金太郎と同じ雑草ではあるんですけどね。でも、身体が小さくても「こういうふうに生きたいな」って思っている奴だったら僕にもできるかもしれないと思って。全身であたりました。

ーー「金太郎」に出てきた名言というのがファンのあいだでいくつか挙げられていて、お持ちしたんですが。高橋さんは、一番思い出に残っているものとかありましたか?

高橋:

僕はやっぱり、大暴走が終わった後にみんなを集めて、パトカーに乗る前に金太郎が言う台詞で、「どんなにゴミみたいに、石ころみたいに扱われても、今夜のことを忘れるんじゃねぇ!人が生きるというのはこれだけ熱いんだ!」という台詞が好きです。この台詞は、今でも自分の奥底にあって支えてくれてますね。

ーー先生は名言を書こうと思って書かれているわけではないと思うんですけれども、どうなんでしょうか。

本宮:

全然意識していないですよ。それ、受け止められ方が違うよな、ということで言えば、「硬派銀次郎」で「男っていうのは普段、灰色でもどぶ色でも、いざっていう時に金色に輝きゃいいんだよ」という台詞を、めちゃくちゃ恥ずかしい思いで、書いたわけ。そうしたらそれが出ると、そこがばっと取り上げられるわけですよ。いやだな、とかね。逆な状況もあるし。単純に言うと、自分で映画とかを観ていてね、戦っているシーンで悪い奴がやられて、拳銃とか武器をそのままにして主人公は去っちゃうわけでしょ。あそこに落っこっている鉄砲って、もったいないとか思うわけ。俺は自分が描き出したら、その鉄砲を拾っていくの。だから、子どもの頃とか若い時に引っかかっていたものを使えるというのは、新しい世代だからできるのであって、それはありましたよね。

ーー金太郎は、パチンコ・スロットでラインナップが世の中に支持されてきましたが、その理由はどこにありそうでしょうか?

対談

本宮:

ちょっと、裏話も聞いていてね。金太郎が一旦、止まったんですよ。「次さ、こういうのだったら、『北斗の拳』がいいと思うよ」みたいことを冗談で言ったことがあったんだ。原作の武論尊は俺の同級生だから、「お前な、あれは本来なら『金太郎』がなるべきだったんだけど、お前のところにみんな金が行っちゃったから。上納金でもって、俺に1割ぐらいよこせよ」とか言うから。これ最初、すごい人気だったんですよね、1代目ね。

高橋:

でもね、出なかった奴がいて、電話をかけてくるんですよ。「お前、出ないんだけど」って。「それ、申し訳ないけど、俺には関係ないんだけど」。しかもこの時の声、僕じゃないんですよ。宮本大誠という、先生とか周りの人が可愛がっていた役者がいて、そいつがやったんですけど。

本宮:

最初に出た頃、四国で飛行機の時間の待ち合わせがあったので、パチンコ屋さんに入ったら置いてあって。やってみたけど、よくわからない。すると隣のお兄ちゃんが、「ちょっといいですか」って言ってさ、俺のやつをポン、ポン、ポン、ポンと押してくれたら、パチンって揃ったんですよ。ジャッカンジャッカン出て。でも飛行機の時間があるから、コースターに金太郎の絵を描いて、「ありがとね、これ、全部あげるわ」って言って行っちゃったら、そいつ、ぽかーんとしていて。

高橋:

がはははは。

本宮:

だから、そのコースターの絵がなんなのかの意味もわからないわけですよ、向こうは。

高橋:

いや、いや、わかりますよ。瞬間、「そんなはずはない」とは思うでしょうね。でも、あとでわかるでしょうね、いろんなことが。

ーー熱く勝負するキャラクターというのが、通じるものがあったのかなと思うんです。人気があってもパチンコ・パチスロでヒットしないタイトルもある中で、金太郎は長く支持されています。金太郎の人柄もその理由のひとつだと思うんですね。負けてもイライラしないというか、ファンからすると。

対談

高橋:

あの勢いの良さがいいんですかね。ああ、ちょっと、金太郎に殴られると厄が飛んでくとか。

本宮:

変な話、聞いていい?

高橋:

はい。

本宮:

もう1回金太郎をやれ、と言ったら、やりようある?

高橋:

この人が年をとっていないからね。そこだけちょっと問題ですけど。

本宮:

いや、もう、年をとる設定で、多分50歳とか。

高橋:

今なら多分、あの頃よりいいと思います。ただ、それが吉か凶かはわからないですけど。あの時はもう、チャレンジしかなかったので。それが物足りなさも含めて、カッと思って気持ちで届かせようと思っていたところが良かったのかもしれないですけど。

ーー次回作がもしあるとしたら、今の高橋さんとまたタッグを組まれて、という可能性が少しありますか。

本宮:

好き勝手やらせてくれるんだったら、手はあるよね。多分。

高橋:

あの時は、やりきった感はありましたが、最後は色々な事情で回らなくなっちゃって終わったのが残念ではありました。

本宮:

ちょっとね、訳ありでね。最初「金太郎」を話を持っていっていた時、どこの局にも「こんな危ないのなんかやれるわけないだろ」って断られていて。多分、克典さんが日曜劇場でやるということ、多分ね、他の本ができていたんじゃない?それを、ある事情で強引に「金太郎」になったの。

高橋:

そうなんですか。確かに拳銃とか殴り合いとか出てくるし。でも、作りようはある。そこにみんな、鳥肌を立てているわけじゃないから。

ーー今回、「金太郎」20周年というタイミングで、また新しくファンのところ商品が届くんですけど、メッセージをいただければと思います。まず高橋さんのほうから。

対談

高橋:

今でこそ、金太郎に暴れてほしい感じもすごくする時代なので、どうか、楽しんでください。20年経ってもパワーの衰えない「金太郎」、本宮ひろ志の心根と言うかパワーをまた届けられるということで。しかも本宮先生は崇高に作品を描くだけではなく、大変失礼な言い方ですが、俗物としてのエネルギーも持たれているので、ここがまた魅力なわけですよ。そこに巻き込まれて、楽しんでいただけたらと思います。

ーー先生もお願いしていいですか。

本宮:

20年経ったと聞かされて、「ああ、そう」というだけの話なんだけど、それをまた商品にしていただいて、ひたすら感謝するのみで、本当にありがとうございます。

高橋:

らしくないですね。それでまとめですか?やっぱり変わったな。

本宮:

目立たず静かに遊んで暮らす、と言ってね、それしかない。

高橋:

それ、三田善吉みたいになってきたな。